路地裏シネマ

映画の感想、評価

【感想】幸せなひとりぼっち【評価】本当に死ぬのがヘタクソね 58点

あらすじ

妻に先立たれ、長年勤めていた会社からも解雇されたオーヴェ。妻を追いかけて自殺しようとするところに、新しく隣人家族がやってくる。自殺しようとするたびに邪魔をされ、なかなか妻の後を終えないオーヴェ。映画ではオーヴェールの悲しい過去を織り交ぜる回想形式で、ストーリーが進んでいく。

作品紹介

スウェーデン映画。原作はベストセラー小説。

感想

全体を通してみれば、本作はすごくいい映画である。オーヴェ単体のストーリーだけで見るのなら、かなりの良作。むしろオーヴェの過去だけ膨らませて映画を作ってもよかったのではないかと思われる。

というのも、オーヴェの現在はヒューマンコメディ、過去はラブ・ストーリーだからだ。かち合っているようで、かち合ってない。無論、こういう形式はよくあるのだが、過去が重すぎて、軽い現在と釣り合ってないように思う。

母、父、家と大切なものを失い続けたオーヴェの前に現れたソーニャという女性。オーヴェとソーニャ。この2人の恋愛過程は、本作ではとても愛おしく書かれている。オーヴェにとってソーニャがどれほど大切なものか、わからない人はいないだろう。オーヴェとソーニャの関係は神聖なものだ。

現在に戻って、老人オーヴェの新しき隣人パルヴァネ。オーヴェもなかなかの偏屈爺さんぶりを見せるが、パルヴァネがそれを上回る。
パルヴァネ自身は決して悪い人間ではない。オーヴェとも気が合うし……。
ただ、「隣人なんだから助けるのが当たり前でしょ」スタンスがどうにも共感できなかった。むしろパルヴァネの存在によって、老人オーヴェの偏屈爺さんぷりが一瞬で消し飛んだ感さえある。
病院まで運転してもらったのにロクに礼もなかったり、勝手に子どものおもりを頼んだり……。
ちゃんと感謝していればいいのだが、パルヴァネのキャラクターのせいなのか、どうしても薄く感じてしまう。

加えて、パルヴィネが「前に進まなきゃ」というセリフがある。ある意味、正論だ。僕も、後を追って自殺しろ、とはぜんぜん思わないのだけど、59歳で病気持ちのオーヴェが「ソーニャとの過去」を捨てる必要がどこにあるのかと思う。死んだ大切な妻のことを思いながら生きることの、何が悪いのだろう。

パルヴァネの存在によって救われているオーヴェがいる以上、パルヴァネがいてよかったのだろうが、観客のぼくは少し苛々してしまった。

ただパルヴァネは「本当に死ぬのがヘタクソね」というこの映画の名言を残してくれたので、そこはよかった。

あと問題点はラストの数十分。ごたこごたしすぎではないだろうか。ラストの列車のシーンは本当にいいだけに、あのごたこごたは悔やまれる。しかしあのごたこごたがなければ、先述した名言もなかったから、うーん……。
白シャツとの戦いも尺がなかったのか、あっさりしすぎ。ただ旧友に向かって話しかけるオーヴェのシーンは最高。

過去パートは素晴らしい。現在パートは色々と惜しい。
「最高」と「うーん」があって評価に迷ったのだけど、「うーん」が強かった。