路地裏シネマ

映画の感想、評価

【感想】マジカル・ガール【評価】2+2=4 70点

あらすじ

白血病の12歳の女の子アリシアは、日本のアニメ魔法少女ユキコにあこがれていた。アリシアの父ルイスは、ユキコの衣装を買ってあげようとする。しかし、日本円で90万円もするのだった。教師をクビになって無職のルイスは、ありったけの本を売るもはした金にしかならず。
娘の願いを叶えようと。宝石強盗をしようとしたとき空からゲロが降ってきて……。

感想

この映画を観て一番感じたのは「皮肉」というものだった。
省略の技法や、予測つかないストーリー、この二つは確かにすばらしい。
「マジカル・ガール」の根幹になっているのは「皮肉」なんじゃないかと思う。

この映画の序盤でルイスが古本屋で本を売ろうとするシーンがある。「蜂の巣」(名著らしい)が、量り売りで5ユーロという価格になってしまう。
文句を言うルイスに、店員は量り売りだから文芸的評価なんて関係ないと返す。

付加価値(評価)は。事実(本の重さ)の前に無効化されている。そしてこの評価(解釈)と、事実の間で観客はぐるんぐるん振り回される。
ところどころ開けられないブラックボックスが置かれる。
2+○=4。○は2だとわかっているが、2の正体は観客の解釈に委ねられる。

ルイスは、娘の願いを叶えるために、悪事を働いてお金を手に入れる。
だが娘であるアリシアは本当にそんなことを望んでいたのだろうか。
アリシアが書いた手紙がラジオで読まれる。
手紙の内容は「パパがいるから病院も好き」というもの。つまりアリシアは純粋に父親といることを望んでいる。

そのラジオを父親であるルイスに聞かせようとするのだが、衣装を手に入れることしか頭にないルイスはラジオを聞かずに外へ出てしまう。
もしアリシアの言うとおりラジオを聞いていれば、悲劇は起こらなかったかもしれない。
娘の願いを叶えようとする父親が、結局は娘の願いを叶えられないという皮肉。

不貞を犯したバルボラが、不貞を隠すためにさらなる不貞を犯してしまう皮肉。

ネタバレになってしまうのであまり触れられないが、ダニアンという元教師。善意の生き物であるが、善意であるがゆえに悲劇を導いてしまう皮肉。
彼が病院から出ていればラストの悲劇は起こらなかった。

とても現実的な映画なのに、魔法少女やらミスマッチなBGMやら、普通なら不調和を起こしそうなのに見事に成立している素晴らしさ。
しかし、それらを差し引いても冗長感はぬぐえず、万人向けではないように思った。
おもしろさの質が違う映画。

www.youtube.com