路地裏シネマ

映画の感想、評価

映画「知らなすぎた男」感想 81点

知らなすぎた男 [Blu-ray]

知らなすぎた男 [Blu-ray]

あらすじ

ビデオ店勤務のウォレスは自分の誕生日を兄弟で祝おうと、ロンドンにいる弟の家を訪れる。
が、弟ジェイムズは大事な商談パーティーを控えていて、それを兄に邪魔されたくなかった。困ったジェイムズは、3時間半もかかる演劇体験ゲーム「シアター・オブ・ライフ」に兄ウォレスを参加させる。
公衆電話で電話に出ると「ビショップ通り六番地の女を殺せ」と指示される。
しかし、その電話は演劇体験ではなく、本物のイギリス諜報部の暗殺指令だった。
演劇だと思っているウォレスが、現実世界でスパイごっこをすることに……。

感想

ウォレスの主観(フィクション)と客観(現実)が入り交じるストーリー

演劇体験だと思っているウォレスはノリノリである。「その受話器を置きやがれってんだ」と言いながら大臣に向かって銃をぶっ放す。
現実の死体も、ウォレスには演技している用にしか見えない。どれだけ死んでいるかを確かめたり、その演技力を讃えたりする。
ウォレスが「いなくなった」といえば、それは「死んだ」と解釈され、死体の処理という意味の「後始末」が、ただの片付けである。
映画を通して貫き続けるこの主観と客観のズレは、ストーリーが進むにつれて尻上がりにひどくなっていく。

能天気すぎるウォレスの性格

もしウォレスが演技家であり、暗い性格であったらこの映画はそこまで愉快なものにならなかっただろう。ウォレスがノリノリで鈍感だからこそ、そのズレを知っている観客はニヤニヤできる。
役者を演じているウォレスが、実際の出来事を「たまげた演出だなあ」とちょくちょく思うのも、メタ的におもしろい。レンタルビデオ店で勤務しているウォレスにとっては、この現実が「映画あるある」としか思えないのだろう。
ウォレスが言う「人生は舞台」こそが、まさにこの映画を現している。
ヒロインが「演技の勉強をしたい」と言うのもおもしろい。
ちなみにウォレスは映画ではその能天気ぷりが「いかれ野郎」と称されており、ぶっちゃけズレを知っている観客である僕もウォレスは「いかれ野郎」にしか見えない。

超ご都合主義

昔の漫画で「とってもラッキーマン」というものがある。デスノートからみでその名前を知っている人も多いだろう。ラッキーマンは圧倒的なラッキーのみでどんな敵もやっつける。
「知らなすぎた男」のウォレスも、ありえないほどラッキーだ。というよりすべてが「彼に現実を気づかせない」ように出来ている。
つまりこの映画のルールは、ウォレスに現実を気づかせないことであり、それにそってどんなご都合主義的な出来事も起こる。
ご都合主義といえば映画で観客を白けさせる要因の一つだが、「知らなすぎた男」ではそれは当てはまらない。
なぜなら「彼に現実を気づかせないルール」を厳守しているからだ。それゆえにこの映画ではどんなご都合主義も許されている。

むしろこの映画はどうやって「彼に現実を気づかない」ように展開していくかを注目してみるとおもしろく観れるだろう。次はどんな飛んでもないご都合主義が出てくるだろうとわくわくして観てほしい。
ちなみに、これと同系統のアニメでいえば、ディズニー作品「フィニアスとファーブ」が当てはまる。「弟がどんなとんでもない発明をしても母親は気づかない」というルールを守ってるからこそ、「フィニアスとファーブ」はおもしろい。

まとめ

腹を抱えて笑えるというよりはニヤニヤできる映画だろうか。わかりやすいボケというよりかは若干シュール寄りなので、わりと人を選ぶかもしれない。ブラックユーモアが好きなら楽しめるだろう。
最後の最後までルールを貫き通したのはあっぱれ。