路地裏シネマ

映画の感想、評価

映画「メッセージ」(2016)感想 50点

「メッセージ」とは

ドゥニ・ヴィルヌーブ監督のSF映画。
突如、現れた12の宇宙船。そのなかにいる宇宙人との交流を描いた作品で、ドンパチや戦争があるような作品ではない。
「彼らがなぜ、地球にやってきたのか?」「何を伝えようとしているのか」という、言語の壁を超えたコミュニケーションの話になっていく。
それは宇宙人vs人類だけではなく、アメリカvs中国といった現実的なコミュニケーションの問題も示唆している。
そんなコミュニケーションの問題に立ち向かうのは、言語学者ルイーズであり、物語は彼女を大きく巻き込む形で終焉する。
まさに「静謐」という言葉がぴったりのSF映画だ。

僕はこの映画には「否」です

で、ここからが個人の意見になるんだけど、「メッセージ」はどうしてもおもしろいと思えなかったし、深いとも思えなかった。
まず、エンタメ作品として見るべきものではないことは、あらすじを少しでも読めばわかるだろう。
この映画が問題にしているコミュニケーションに関しては、もっと複雑で難しいことを他の映画や小説でしていると思う。
言語の壁、あるいは生物の種類の壁、それは誰にでもわかる断絶でしかない。
同じ言語を使っているのに、「理解し合えない」方が、コミュニケーションの問題として根深いのではないだろうか。
映画では、言語が違うと思考も変わってくるという話をしているけど、言語が同じなのにわかりあえない方が、もっと複雑だし、わかりあえているように見えてわかり合えないことだってある。

まあ、そういうのは捨て置いて、宇宙人というか自分とは違う生物とのコミュニケーションの難しさにリソースを割くなら、そこにもっと言語以外の情報が欲しかった。
一生懸命解読していても、そんなもん作り手が考えたものじゃんか、というメタ的なことしか思わなかった。
唯一好きだったのは水墨画のような言語の表現の仕方。そこは良かったのだけど、宇宙人の動きは、ほぼ伝達として無意味だったんじゃないか。
表情や動きを読み取ることをしても良いのに、無視されていることが気になった。
コミュニケーションは言語だけじゃないだろう。

あとネタバレになるから言えないが、主人公であるルイーズ周りの結末も微妙としか言えない。
彼女の背負う重みは、SFとしてありふれているんじゃないだろうか。
時間に対する概念も、別段新しくもない。

と、結構辛口の評価なんだけど、実際もしメッセージのように宇宙船がやってきたら、ものすごくおもしろいだろうなとは思った。宇宙人とのコミュニケーションについて真剣に考えるだろう。
だけど、フィクションという目線で観るとものすごくつまらない。共感材料があればまだしも。それすらないこの映画にリアリティをもって見ることができない。

ネタバレあり捕捉

この映画で個人的に一番おもしろいと思うのは、言語によって概念が変わるところだと思う。ルイーズは、宇宙人(ヘプタボット)の言語を学ぶことによって、時間という概念さえ変わってしまう。それゆえ彼女は未来を知ることになる。
だけどこんな良い設定が、物語のご都合的なものとして使われている気がする。ルイーズが悲しい未来を背負うことより、この概念が変わる仕組みの方を強調して映画を作っていれば、もっと楽しめたかもしれない。