(点)70点台 (類)アニメ映画

映画「未来のミライ」感想 76点 

投稿日:2018年7月21日 更新日:

未来のミライ (角川文庫)

「未来のミライ」は大衆向けはしないけど観る価値はある作品

事前に評判があんまりよろしくないことを知りつつ見ました。
というのも自分が細田守監督にまったくハマっていないこともあり、「細田監督好きな人が低評価なら逆におもしろいのでは?」と思ったからですね。

結論からいうと「『未来のミライ』はおもしろいんだけど、おもしろさのポイントがかなり特殊なため人を選ぶ作品」っていう感じではないでしょうか?
個人的にはおもしろかったのですが、大衆向けでもないですし、子供向けでもありません。

シュルレアリスムでいうところの自動筆記に近い脚本だと思います。
また。この映画を「家族」の話だと思うのは違くて、タイトル通り「時間」の話です。

エンタメを見ようとしている人にはまったく向いていません。物語はあるんですが、むしろアンチ・ロマンとかそっちの方に近いんじゃないかな。
この映画をあらすじとしてまとめようとするとかなり難しいですよね。
たとえば、この映画は「主人公のくんちゃんに妹の未来ちゃんができて、その未来ちゃんがミライからやってくる」という部分があります。
では、ミライちゃんが未来からやってきた理由はなんでしょうか。

ここでたいていの脚本はもう何十回やったのかわからない「家族の危機」だとか「世界を救うため」とか持ち出してきます。「未来のミライ」をつまらないと思う人は、この手のありふれた物語だったら楽しめた人も多いような気がしますね。
でも、ミライちゃんがわざわざ未来からやってきた理由は「出しっぱなしのお雛様をしまうため」です。

未来からやってくるという壮大な出来事が、小さい物語に収束してしまいます。恐らくエンタメを求めている観客の期待とは真逆のものですよね。
ただ、こういう風に物語が展開したせいで「この映画がどこへ行くかわからない」という予測のつかなさが誕生しました。この予測のつかなさを「おもしろいと思うか」で、評価が変わってきますね。

エンタメ的な映画や漫画を見るときに、ストーリーの流れって観客はわかってしまっているんですよね。バカみたいに思われるかもしれないんですが、ヒーローものだったら「ヒーローが悪役を倒すところ」を見たいから見ているんですよ。
おもしろいというのは「自分が予想している展開に沿ってくれるか?」なんです。
そういう意味では、この映画はおもしろくありません。
予告編を見たときに「ミライちゃんがお雛様をしまうのが見たい!」と思う人なんて皆無でしょうから。

ただ、僕は映画は予測がつかない方がおもしろいと思います。デヴィッド・リンチやゴダールの映画を見たときの謎のワクワク感が好きな人も多いでしょう。
だから、「未来のミライ」は、「この映画って○○だよね」ってまとめようとする人には向かないし、映画の出来事に対して物語的な理由を求める人には向かないんじゃないかな。

その場その場で流れる映像を楽しめるかにかかってきます。
少しネタバレになってしまうのですが、個人的には、子供のときの母親と会って何をするかと思いきや「家の中を散らかしまくる」ところとかおもしろいと思うんですよね。
ほとんどの脚本家はこんな話にしないでしょうから。まず、発想的に出てこないんじゃないかな。

「未来のミライ」における時間

この映画に描かれているのは時間ですよね。お母さんの若いころにこういう話があって、ひいおじいさんの若いころにこういう話があって、未来ちゃんが大きくなったらこうなっていて……という過去と未来すべての時間。
その時間のなかで一つでも違っていたら、今は成立していなかったという話。
ひいおじいさんが夢中になってかけっこをしなかったら、くんちゃんも未来ちゃんも生まれていなかった。
テーマとしてはありきたいだとは思うんですが、それでもこの種のテーマは普遍的に良いと思います。

「4歳の男の子に感情移入できない」と否定する人もいると思うんですが、この映画には多角的な視点があるんですよね。くんちゃんだけでなく、お父さんお母さんミライちゃん、犬のゆっこから物語が見れる。
くんちゃんが自転車に乗れてお父さんが泣いたシーンとか、その場だけでは嬉し泣きに見えるんだけど、映画を最後まで見るとシーンの意味合いがまた違ってくる。
この映画のラスト近くで見せられた過去と未来の映像は、一つ一つそれ自体が物語として起点を持っているものです。ネタバレになりますが、「鳥が猫にやられて好きだった猫が嫌いになった」という過去はお母さんのものです。だけど、それからお母さんがどうしたかは語られません。ただ、そういう時間があっていま、くんちゃんと未来ちゃんのお母さんとして存在している。
もし、このエピソードがなかったら犬のゆっこじゃなくて猫が飼われていたでしょう。
これは映画に限ったことじゃなくて、現実世界もそうですよね。過去にあった出来事が少しでも狂うだけで、いまは変わってしまいます。
そういうことを改めて考えさせられる良い映画だったと思います。

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